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現在の日本で流通しているルビー・サファイアといった、色鮮やかなカラーストーンの多くは販売前に人工的な熱処理を加えられています。そうすることでより色鮮やかな美しい輝きになるためです。
しかし近年、自然のままでも美しい非加熱処理の宝石に注目が集まっています。ここでは非加熱の宝石について、その価値や判別方法などについてまとめています。加熱処理の宝石よりも高値で取引されていることが多い非加熱処理の宝石。しかし、熱を加えない自然な宝石=必ずしも高価ではない、という点も注意が必要です。宝石の価値について、今一度認識していきましょう。
非加熱の宝石とは、人工的な加熱処理をしていない宝石のことです。
カラーストーンであるルビー・サファイアなどはコランダムと呼ばれる鉱石でできています。その色彩鮮やかな見た目が大きな特徴のカラーストーンですが、原石の多くが淡く濁った色をしています。そこに加熱処理をすることで、物質同士が化学反応を起こし、色鮮やかに変色。
熱処理を行うことで、経年や自然光・人工光に影響されず、永久的に美しい色を保つ宝石になります。現在日本の市場で流通している宝石の9割は、加熱処理を施している状態です。
非加熱の宝石はそうした処理を加えていない原石そのもの。そのため不純物による黒ずみや色ムラが残っているのが大きな特徴です。加工の痕跡がない非加熱の宝石は希少で、多くの市場で高値での取引が行われています。
見た目が全く同じカラーストーンでも、加熱処理か非加熱処理かという違いで取引価格の差が数十倍以上にまで開くことがあります。しかし、希少価値が高いからといっても、非加熱の宝石すべてが加熱処理の宝石より高値で取引されるわけではありません。
宝石の価値は、「人の手を加えていないかどうか」ではなく、「その見た目が美しいかどうか」。非加熱の宝石でも、熱処理の宝石より色ムラが目立つものや、輝きが鈍いものだと高値の取引は望めないでしょう。
人の手によって美しく磨かれた宝石を楽しみたいのか、自然に近い姿の宝石を楽しみたいのか、個人の楽しみ方で宝石の価値は変わります。ただ自然の原石を見ることで今後いい宝石を選択する目が養えることもあるでしょう。その点では非加熱の宝石を選ぶのは非常に有効といえるかもしれません。
ルビー・サファイアなどと呼ばれるコランダム宝石には、美しさを左右する要素として、その結晶に大量に存在する「シルク・インクルージョン」という物質があります。このシルク・インクルージョンは加熱することで溶け出し、宝石の透明度が増すのが特徴。内部の物質が破損していたり、シルク・インクルージョンが溶解しているかどうかによって、加熱処理の宝石を見分けることができます。
シルク・インクルージョンはその名の通り絹糸のように細長い形の物質です。シルク・インクルージョンが見られる宝石は、熱処理がされていない状態だといえるでしょう。しかし、シルク・インクルージョンが残っていても、その形が絹のように原型をとどめていなければ、熱処理が加えられている可能性があります。宝石内の物質も加工の度合いを測る判断基準になるので、覚えておくとよいでしょう。
宝石は、きちんとした知識を持つプロに鑑定してもらうのがおすすめです。特に非加熱処理の宝石は採掘されたままの状態を保っているため。色ムラや外見・仕上がりで判別されてしまうと高価な取引が見込めなくなってしまいます。
また、非加熱処理の宝石の価値は物質内のシルク・インクルージョンの状態を確認してから決定されるのが一般的。シルク・インクルージョンは肉眼では判別できない物質のため、特殊な精密機器を使って鑑識を行う必要があります。
正しく鑑定してもらうには、信頼できる実績・技術のある宝石買取店を探しておくことが大切でしょう。正確な知識と技術を持った鑑定士に非加熱の宝石を見てもらうことで、外見上で判別できない非加熱宝石の正しい価値を示してもらえます。